君は知らない
目論み
目の前にバカな女がいる。
ここは沢山のラブホテルがある通称「ラブ通り」俺はラブ通りより徒歩3分で到着するサンドイッチが絶品のお店「サンセット」に向かう為にこのラブ通りを近道として歩いていた。
正直サンドイッチを買う為にわざわざ、このラブ通りを通らなくても行けるのだが今日は仕事帰りで疲れて一刻も早く買って帰り家でのんびりしたかった。
だから本当は通りたくなかったが我慢をしたのだ。
独り身の俺にいちゃつくカップルを見るのは苛つくが今日はあえて妥協したのだ。
なのに俺の2、3メートール先にラブホテルに強引に連れ込まれようとしているバカな女がいた。
なんてスキだらけの女なんだ?
顔だけ見てやろうと女に近づいたら聞き覚えのある特徴のある声が聞こえてきた。
「待って!私達今日会ったばかりだよ」
甲高くて幼い声。例えて言うならアニメ声。俺はこの女を知っている。
中学、高校時代好きだった女。早乙女 光だ。
俺は彼女が好きだったのに素直になれず苛めて結果嫌われた。
中3の卒業式の時、父親の転勤で引っ越しが決まった俺は初めて彼女に手紙を書いた。
"卒業式が終わったら白樺公園で待ってます。話したい事があるので待ってます"
自分の名前は敢えて書かなかった。俺だとわかったら来ないと思ったからだ。
この土地にいるのもあと数日。最後に告白をしようと思って卒業式が終わって急いで白樺公園に向かい公園内にあるひとけのないベンチに座り彼女を待った。
白樺公園を待ち合わせの場所にしたのには意味があった。
中学から程よく離れていたし遊具が少なく古びた公園だったから人があまりいなかった。
告白には最適の場所だったからだ。
1時間ほど待って彼女が公園に現れた。キョロキョロと誰かを探している様子だった。
嬉しくて彼女がいるブランコの近くまで歩いて行ったら俺の顔を見るなり彼女の表情は見る見るひきつり露骨に嫌な顔をし足早に走り去った。
俺はその場にしゃがみこみ拳を震わせ「ちくしょう」と小さく呟いた。
最後のチャンスだったのに…
最後に今までの事を詫びて自分の気持ち伝えたかった。
光の事好きだったのに…
周りから冷やかされるのが嫌で、両親の不仲がストレスで光を友達と一緒になって苛め続けた。
最初は仲良くてこのままいったら付き合うかもと思うぐらいだったのに…
自分の馬鹿さ加減に嫌気がさした。