君は知らない

光 ①


私は今非常に危険な状況に置かれている。

「体調悪いみたいだから休んで行こう」
パーティーで知り合った男が野獣となり私を襲おうとしているのだ。

ヘラヘラと安っぽい笑顔を浮かべながら掴んだ手を強引に引っ張り体ごとラブホテルの入り口に入れられようとしている。

この男!怖い!

パーティーで話した時は紳士的に見えたから、お茶くらいしてもいいかと会場近くのカフェでお茶をしたあたりから様子が変わった。

何かと理由を付けては手を握ってきたり、テーブルの下から私の膝に自分の膝を入れてきたりしたから身の危険を感じて体調不良という事にして帰ろうと思ったら駅まで送ると、しつこく言ってきたから仕方なく二人で歩きだした。

何か男から離れる理由はないかと考えていたら、夜道は危ないからと手を握られ男の誘導の元、連れて来られたのはラブホテル街。

これはヤバイ!と逃げ出す方法を思案していたら男から

「体調大丈夫?顔色悪いよ」

言葉だけ私を気遣いながら視線はホテルの建物を見ていた。

あからさまだな。

婚活パーティーでの印象は、場馴れしてなく、会場内をキョロキョロ見渡して、おとなしい感じがした。

会場内で誰にも話しかけて貰えない私は寂しくて彼に声を掛けた。
一人同士なら少しは話が弾むかもしれないと考えたからだ。

「あの、お一人で参加ですか?」
大体男性は一人参加が多いのは分かっていたが当たり障りない会話を探さないといけないから、こんな声掛けになってしまった。

「はい。初めての参加でよく分からなくて」

ぎこちない笑顔で男は言った。

「私も初めてで、しかも一人参加なのでどうして良いか分からなくて」

私も精一杯の作り笑顔で答えた。

本当はパーティーはもう5回目。
今のところ何も収穫はない。


毎回男性全員と話は出来るが会話時間はわずか5分。そんなんで一体何が分かるというのだ!
名前と自分の仕事内容を話をして終了してしまうのが大半。
フリータイムの時間になれば感じの良い男性(高収入、高学歴、顔普通)は女性に人気で私は話す事もできないし、相手にもされない。

私のフリータイムの過ごし方は冷めきった料理に食らいつき楽しそうなカップルを横目に一人寂しく過ごすだけだ。

そして連絡先を交換する事もなく一人家路に向かうのだ。

家に到着して狭いワンルームにポツンと一人でいたら悲しくて寂しくて返信の期待がない メールを送ってしまう。

1週間に一度連絡が来るか来ないか分からない遠い彼に…
彼とは会わなくなってもう一年近くになろうとしている。上手くいかない現実。何もかもにイライラする。

そんな思い出しかなかったパーティーで今回は進展があり私は淡い期待を持った。

もしかしたら連絡先交換できるかもしれない!
初めて声を掛け最初はどうなる事かと心配したが話が弾んで1時間ほど経過した。

彼の名前は松井。歳は34で勤め先は大手保険会社。趣味は映画鑑賞と食べ歩き。

私と3つ違い。趣味も合う。この人と結婚したら安定した生活が送れそうだ。
まだ付き合っても始まってもいないけど、ここまで長く話出来たから脈ありかなと思っている。

パーティーも終盤を迎えいよいよカップル発表となった時、男が
「これから、お茶でもしない?」
そう言って誘ってきた。

「うん」
私は小さく頷きながら男とパーティー会場を後にした。

ヤッタ!カップル成立!
もしかしたら付き合っちゃうかも?
馬鹿な私は期待していたのだ。

そして男にラブホテルに連れ込まれようとしている。
何とかしてこの場を逃げようとしていた所に見知らぬ男が

「光!何してるの!早く行くよ」
と声掛けた。
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