映画みたいな恋をして
二人との出会いは今から3年前。彼らは教育実習先として赴いた母校の三年生だった。
私の指導担当をしてくれた先生のクラスにアキラがいた。彼はとても目立つ生徒だった。
成績優秀で自信家で野心家のカリスマ的存在。人を惹きつける華もあった。
強く熱い熱を放つ太陽の光のような彼にときめかなかった、といえば嘘になる。でもそこまでだった。
まさか4つも年下で、しかも制服を着ている男の子との恋愛など全く考えられなかったからだ。
吾郎にしても同じくだった。彼もまたとても目を引く存在だった。
温厚で人当りの良い彼の周りにはいつも人が集まり笑い声がしていた。
穏やかな人柄と行動からは想像がつかないけれど、アキラ同様やはり自信家で、ロマンチストだった。
内に秘めたる静かなる情熱は冴えた月光の鋭い輝きのようだった。
そんな吾郎との出会いは部活が切欠だ。私は中学高校とテニスをしていた。
顧問の先生はまだ私の頃と同じ先生で「懐かしいなあ」と歓迎してくれた。
部活はテニス部を見てくれと頼まれた。女子部を見るはずだったのに
「そんなん不公平や。俺らも先輩と練習したい」と抗議したのは吾郎だった。
おかげで男子相手のハードな打ち合いをするはめになりしばらく筋肉痛に苦しんだ。
「だらしねえな、あの程度で筋肉痛か」と不敵に笑ったアキラもテニス部だった。
吾郎とアキラ。対照的な二人は親友でありライバル同士だった。
実習の2週間はあっという間に過ぎた。その後、採用試験までは日にちがあまりなく慌しい日々を送りつつ
たまに部活の練習に参加したり、試合を観戦したりした。
二人が部活を引退し受験モードになってからは受験勉強の息抜きにと三人で食事をしたり
SNSのグループトークで他愛のない会話を楽しんだりもした。
そんなある日の夕方、アキラから連絡があった。
「今から車だせよ」
「なんで?」
「かっ飛ばしたい気分なんだよ。15分後に緑ヶ丘駅前な」
「あのね、私にも都合ってもんがあるんですけど?」
「悪いのか、都合」
「別に 悪くないけど・・・」
ほらみろ、と言わんばかりにアキラは鼻で笑った。
「夕暮れから夜に変わっていく空のグラデが好きなんだ。
ほんの短い時間だ。つき合ってくれ」
あの空の色彩は私も好きだ。
もの哀しく切なくそれでいてときめきを感じる景色。
「了解」言うや否や電源を切って私は車のキィを掴んだ。
それからも時々 アキラと二人きりで短いドライブをするようになった。
時間帯はいつも同じ夕暮れから夜にかけて。
眼前に広がる空がオレンジから赤、紫、そして濃紺へと
パレットの上でゆっくりと混ざり合い広がっていくように染まる様に陶酔した。
BGMはNYCセレナーデ。えらく好みが古いわね、と笑ったら
このシチュエーションにはこれだと決めているんだよ、とアキラは照れた様子で
ぷいと視線をウインドウの外へ飛ばした。そのアキラの拘りが琴線に触れた。
美しい色彩と音響に心地よく浸る時間に言葉はいらなかった。
アキラと過ごすこの束の間が私にとっても大切な時間になった。
私の指導担当をしてくれた先生のクラスにアキラがいた。彼はとても目立つ生徒だった。
成績優秀で自信家で野心家のカリスマ的存在。人を惹きつける華もあった。
強く熱い熱を放つ太陽の光のような彼にときめかなかった、といえば嘘になる。でもそこまでだった。
まさか4つも年下で、しかも制服を着ている男の子との恋愛など全く考えられなかったからだ。
吾郎にしても同じくだった。彼もまたとても目を引く存在だった。
温厚で人当りの良い彼の周りにはいつも人が集まり笑い声がしていた。
穏やかな人柄と行動からは想像がつかないけれど、アキラ同様やはり自信家で、ロマンチストだった。
内に秘めたる静かなる情熱は冴えた月光の鋭い輝きのようだった。
そんな吾郎との出会いは部活が切欠だ。私は中学高校とテニスをしていた。
顧問の先生はまだ私の頃と同じ先生で「懐かしいなあ」と歓迎してくれた。
部活はテニス部を見てくれと頼まれた。女子部を見るはずだったのに
「そんなん不公平や。俺らも先輩と練習したい」と抗議したのは吾郎だった。
おかげで男子相手のハードな打ち合いをするはめになりしばらく筋肉痛に苦しんだ。
「だらしねえな、あの程度で筋肉痛か」と不敵に笑ったアキラもテニス部だった。
吾郎とアキラ。対照的な二人は親友でありライバル同士だった。
実習の2週間はあっという間に過ぎた。その後、採用試験までは日にちがあまりなく慌しい日々を送りつつ
たまに部活の練習に参加したり、試合を観戦したりした。
二人が部活を引退し受験モードになってからは受験勉強の息抜きにと三人で食事をしたり
SNSのグループトークで他愛のない会話を楽しんだりもした。
そんなある日の夕方、アキラから連絡があった。
「今から車だせよ」
「なんで?」
「かっ飛ばしたい気分なんだよ。15分後に緑ヶ丘駅前な」
「あのね、私にも都合ってもんがあるんですけど?」
「悪いのか、都合」
「別に 悪くないけど・・・」
ほらみろ、と言わんばかりにアキラは鼻で笑った。
「夕暮れから夜に変わっていく空のグラデが好きなんだ。
ほんの短い時間だ。つき合ってくれ」
あの空の色彩は私も好きだ。
もの哀しく切なくそれでいてときめきを感じる景色。
「了解」言うや否や電源を切って私は車のキィを掴んだ。
それからも時々 アキラと二人きりで短いドライブをするようになった。
時間帯はいつも同じ夕暮れから夜にかけて。
眼前に広がる空がオレンジから赤、紫、そして濃紺へと
パレットの上でゆっくりと混ざり合い広がっていくように染まる様に陶酔した。
BGMはNYCセレナーデ。えらく好みが古いわね、と笑ったら
このシチュエーションにはこれだと決めているんだよ、とアキラは照れた様子で
ぷいと視線をウインドウの外へ飛ばした。そのアキラの拘りが琴線に触れた。
美しい色彩と音響に心地よく浸る時間に言葉はいらなかった。
アキラと過ごすこの束の間が私にとっても大切な時間になった。