歌で想いを…
…恋の自宅。
「お邪魔しまーす」
「誰もいないし、ゆっくりしてって。泊まっても構わないから」
「あ、うん。」
恋の家庭の事情はわかっていたため、それ以上はなにも言わなかった。
「部屋は、階段上がって真正面だから。飲み物持ってくから先いってて」
「わかった」
しばらくして、恋が飲み物を持って部屋に入ってきた
お互い無言が続いたが、先に口をひらいたのは竜也だった。
「さて、と。まず色々聞きたいことがあるんだ…いいよな?」
「答えられる範囲で答えるよ」
「じゃあ、まずは…なんであの大会の後、練習に来なかった?」
「大会終了後、学校が始まった日に退部届を提出したから」
「退部届を提出した理由は?」
「音楽から解放されたかった。」
「じゃあ、なんで今回のことを引き受けた?」
「……何でだろうな。
先生が、必死に頼んできたからかな?」
「…………
あの大会のことを後悔してるか?」
「……………さぁな
でも、あの大会が終わった後の俺がとった行動なら後悔してないんじゃないかな?」
「はぐらかすなよ」
「………じゃあ、言わせて貰う。
今更あの大会のことを後悔して、なんになる?
あの大会の結果が変わる訳じゃない。
ましてや…アイツの言った言葉が…俺の中から消える訳でもない
今回、引き受けたのは…先生に頼まれたのも理由の1つだけど、何より…先生の生徒であるあの子達の夢を応援するためだ。」
「……あの子達の夢?」
「もう、わすれたのか?
ダンス合唱部に入る条件を」
「ダンス合唱部に入る条件…
……あ、もしかして…」
「そう。ダンス合唱部に入る条件
それは、全国大会で優勝を目標とすること。」
「……………」
「それと同時に、先生が密かに決めていた退部届を受理する条件…その夢を諦めること」
「………………っ!!」
「俺は、その夢を叶えられなかった上に諦めた。
大会が終わった瞬間に…だから、退部届を提出し理由を話して受理して貰った。
当然、本当の理由を話さないで欲しいと言ってね」
「……………」
「けど、まぁ。
俺はどうやら、心底…音楽が好きらしい。
先生に今回のことを頼まれたとは言え、簡単に引き受けたんだからな」
「……………」
「さて、今までの思い出話はここまでにしようぜ?
今回から加わる、歌とダンスのソロ発表について考えなきゃいけないしな」
「……………そうだな。」
それから、恋と竜也の発表の話は朝方まで続いた……