歌で想いを…
新たな助っ人
中尾との話が終わり、恋が練習に加わった。
「じゃあ、まずは…恋に1回歌ってもらうか」
中尾がそう声をかけると、恋は息を整えながら歌を歌う体制に入った。
「……♪♪♪~♪♪~」
「ストップ!!」
その声と共に、音楽が止まった。
「それがお前の本気なのか?」
中尾はいつになく怖い顔で恋をみていた。
「そうなんじゃないですか?」
恋がそうとぼけると、中尾が今度は呆れた顔をしていた。
「そんなわけないだろ…
何年お前のこと見てきたと思ってんだよ」
「………」
「いつまでアイツの言葉を引きずってるつもりだ?」
次の瞬間…体育館中に恋の声が響き渡った。
「俺の前で、アイツの話なんてするんじゃねぇ!!」
恋の言葉に中尾は、驚きもせず…ただ冷静に言葉を返した。
「…やっぱり。まだ忘れてなかったんだな。それに、口調が乱れてるぞ?」
「………アイツは、何もかも壊したんです。
そんなアイツを……っ
忘れるわけないじゃないですか…」
「……………」
生徒は訳が分からず、不思議そうな顔で中尾を見ていた。
その視線に気づいた中尾が生徒に声をかけた
「あ、すまんな。
訳わかんないだろ」
「は、はい。」
「少し、長くなるんだが…
恋、聞きたくないなら廊下出てろ」
「……構いません。聞きませんから」
恋は、ウォークマンを取り出し音楽を聞き始めた。
中尾は生徒達に当時、何があったのか説明した。
「…俺と恋の兄貴は、同級生で幼馴染みでな
恋と恋の兄貴、そして俺の3人は…小さい頃からよく一緒に遊んでたんだ
その関係がずっと続くと思ってたよ。恋が高校生になるまではな」
「「「………………………」」」
生徒達は中尾の話を真剣に聞いていた。
「恋が高校生になった頃には、俺と仁は社会に出て仕事をしていた。仁ってのは恋の兄貴な?
昔から教師を目指してた俺は、母校であるこの高校に就職した。そこに恋が入学してきたんだ。
で、メンバーを集めて部活をつくって、大会にも参加して成績を残した。
俺らの関係が崩れたのは、恋が高2になった年の夏だった。」