それでも僕が憶えているから

PCコーナーには3台の端末が設置されている。
わたし以外の利用者はなく、本来なら一時間のところを延長して使わせてもらえた。

が、やはり名前だけで調べるのは限界があった。

出てくるのは姓名判断のサイトとか、よく似た名前の人のSNSばかり。

それらしい情報にはたどり着かず、焦ってマウスをかちかち鳴らしていると、


「ネットなんか調べても、何も載ってないぞ」


聞き覚えのある声が、後頭部のななめ上で響いた。

ビックリしたわたしの右手から、勢いよくマウスが飛ぶ。
PC本体とコードでつながっているそれは、半円を描いてわたしのおでこを直撃した。


「い、痛……!」

「バカなのか、お前」


あんたが驚かすからだろ! 

隣の椅子にどかっと座ったホタルを、精いっぱい涙目でにらみつける。
もちろんホタルは動じないのだけど。
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