それでも僕が憶えているから
「それって……あんたのお母さんでもあるんじゃないの?」
「ちがう。蒼のだ」
どうちがうんだろう。
わからないけど、ホタルは頑なに“蒼の”と線を引く。
「じゃああんたの目的っていうのは、この人の情報を集めること、だよね?」
「それもちがう。目的はもう片方」
もう片方?
「蒼の父親を探してる。でもそいつはどこの誰かもわらかない。唯一の手掛かりが、死んだ母親の名前ってわけだ」
ここでもホタルは、お父さんのことを“蒼の”と言った。
ホタル……そんな言い方してるけど、本音は、自分にとっても親だと思っているんじゃないの?
だから探して会いに行きたいんじゃないの?
思わずそう考えたのは、自分の感覚と無意識に重ねてしまったせいかもしれない。
実際にホタルが言ったわけじゃない、勝手なわたしの自己陶酔。
それなのに言葉が自動的に出てしまった。
「じゃあわたし、一緒にお父さんを探すよ」
ホタルが大きく目を見張った。
その顔を見たわたしは、とんでもない発言をしてしまったようやく気づく。
わたし、何してるんだろう。自ら首を突っ込むなんて。