それでも僕が憶えているから

悪びれる様子もなくホタルは言い放ち、「それに」と続けた。


「おとしだまは大人が、袋に金を入れてくれるものだって、お前が僕に教えたんだよな?」

「とぼけないで!」


あまりにも悪質すぎる。
千歳の恋心につけこんで、彼女が自らお金を出すように仕向けるなんて。

しかもお金が必要な理由を、おばさんの入院費だと嘘までついたらしい。
何もかも卑怯すぎて吐き気がした。

そして、それと同時に“裏切られた”とも感じた。
わたしはいつのまにかホタルのことを買いかぶっていたんだ。
そんな自分が悔しくて仕方ない。


「……やっぱり、あんたには、普通の人間の心がないんだね」


ホタルの眉がぴくりと動いた。
だけど興奮しているわたしは、言葉を止めない。


「蒼ちゃんのことも、千歳のことも利用して! 最低だよ!」

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