それでも僕が憶えているから

「いつか、気づくんでしょうか……蒼ちゃんは」

「そうなるでしょうね。もしかしたら、すでに薄々感じてはいるのかも。
でも、あえて気づかないようにしているのかもしれない」


ホタルも以前、それに近いことを言っていた。
蒼ちゃんは認めたくない現実から目をそらすって。

だけどそれを責めることは、わたしには到底できない。


「……どうしてホタルは、また現れたんだろう」


小さく漏れたひとり言に、おばさんは遠くを見つめるような顔で言った。


「わからない。だけどそこにはきっと、何か理由があるはずなの」


    * * *


おばさんと別れたあと、わたしは病院のロビーに移動し、長椅子のすみに座ってスマホを出した。

“多重人格 原因”

……生まれて初めてだ。こんなキーワードで検索するのは。

複数の検索結果が画面に表示された。
わたしは上から順番に、それらを開いていく。
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