それでも僕が憶えているから

読んでいるうちに、胃の中をかき混ぜられるような不快感に襲われた。

専門的な情報サイトや、患者自身のブログ、冷やかし目的の落書きまで、
インターネットの情報は玉石混交ではあるものの、おおむね共通していたのは、この病気はまだ明確に解明されていないということだった。

そしてもうひとつ。
発病する原因の多くは、トラウマ的な体験にあるということ。

その説に当てはめるなら、蒼ちゃんも過去に何かキッカケとなる出来事があったのだろう。

そしてその辛い記憶や感情を、蒼ちゃんの代わりに背負うためにホタルたちが生まれた……。


もしも自分が交代人格の立場だったら、とわたしは少し想像してみた。

自分の体を持たず、自分の戸籍すら持たず。
誰かの苦痛を肩代わりするためだけに、この世に生まれてきた存在。

そんなの、想像しただけでも気の遠くなるような恐怖を感じる。


わたしはスマホを握りしめた。
自分に対する怒りと後悔で手が震えていた。

< 133 / 359 >

この作品をシェア

pagetop