それでも僕が憶えているから


――タイムリミットは2時間半。
急ぎ足で地下鉄に乗ってたどり着いたのは、“東京都立T高校”と書かれた校門の前だった。

夏休み中だからか、制服姿の生徒は見当たらない。
部活は行われているらしく、向かって左の体育館からバスケット部のドリブルの音が聞こえた。


「ここが蒼ちゃんのお母さんの出身校?」

「ああ。大学には進まなかったから、ここが最終学歴だな」

「でも、卒業してから20年くらい経ってるよね」


それなら実家の近辺を探った方がいいんじゃ……とひそかに浮かんだ考えは、ホタルにはお見通しだったらしい。


「蒼の母親が育った家は借家で、今はもう別の建物になってる。両親はとうに死んだし、兄弟もいない。行っても無駄だ。
それに目的は、蒼の父親探しだぞ。だったら高校を調べる方が可能性は高いだろ」

「どういうこと? 父親探しに、高校が何か関係あるの?」


いまいち飲みこめずに首をかしげると、ホタルが盛大なため息をついた。


「蒼の父親と母親は籍を入れなかった」

「うん」
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