それでも僕が憶えているから

「つまり何かワケアリだったってことだ。そんなとき、お前ら女は誰に相談する?」

「あっ、そうか! 普通は友達に相談するよね」


“お前ら女”とひとくくりにされたことは癪だけど、たしかに一理ある。

なるほど、だからホタルはここに来たのか。
高校の卒業アルバムを調べれば、蒼ちゃんのお母さん――水原香澄さんと友達だった人が見つかるかもしれない。

その人なら蒼ちゃんのお父さんについて、何か知っている可能性が高いのだ。


「すごいじゃん、あんた! 冴えてるね」

「お前もちょっとはここを使えよ」


とんとん、と人差し指で自分の頭の横を叩きながら見下ろしてくるホタル。

わたしはむきになって言い返した。


「あいにく、誰かさんみたいに悪知恵が働かないんでね」

「じゃあその分、足を使うんだな」

「あっ、待ってよ!」


急に歩き出したホタルのあとを、あわてて追う。

ほんっとに可愛げのない男。
蒼ちゃんの体じゃなければ後ろから飛び蹴りしてやるのに!
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