それでも僕が憶えているから

学校の敷地内に入ったわたしたちが校舎に向かっていると、ダンス部らしき女子たちが外で自主練習をしていた。

振り付けの確認をしているのだろう、円になって踊りながら声をかけ合っている。

その近くを通りかかったとたん、彼女らの動きが止まった。

全員の視線が吸い寄せられるように向いたのは、ホタルの方だ。

「え、誰?」とか「超かっこいい」とか高い声が聞こえ、まるで芸能人が通ったようにざわめきたっている。
当のホタルは気にもとめず、すたすた歩いているけれど。

わたしはスルーされた彼女たちに半分同情しながら、ホタルの横顔を盗み見た。

……まあ、たしかに見た目だけはいいんだよね、こいつ。

顔も体も蒼ちゃんのものだけど、放つオーラは全然違う。

蒼ちゃんはどちらかと言えば正統派の王子様タイプ。
聡明そうな目元も、つるっつるの肌も、彼のさわやかさを引き立てる要素だ。
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