それでも僕が憶えているから

ぺたんぺたん、と床に貼りつくような足音がふたつ。
知らない学校に入って緊張気味なわたしとは裏腹に、ホタルはちっとも物怖じしていない様子だ。


「ねえ」

「ん?」

「よく考えたら、卒アルってどこに置いてるのかな」

「それは僕じゃなくて教師に聞け」


その教師の姿が見当たらないから、あんたに聞いてるんじゃんか。
つっけんどんな返答にわたしは唇を尖らせながら、廊下の先を見る。


「あ、職員室」


前方に職員室のルームプレートを発見し、人差し指を差した。
あそこならひとりくらいは先生がいるかもしれない。

期待に胸を躍らせて駆け出した、そのとき――


「真緒っ、止まれ!」


突然、ホタルが背後から叫んだ。

直後に耳をつんざくような音。
視界の左端で、窓ガラスが破裂するように割れた。
飛び散る破片、乱反射する光。

次の瞬間、腕をつかまれて体が勢いよく半回転した。


「……っ」

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