それでも僕が憶えているから

先生の言うことはもっともで、わたしは意気消沈した。

このご時世、ましてや卒業アルバムが盗まれる事件があったあと。
わたしたちみたいな得体の知れないやつが卒業生について調べているなんて、普通に考えたら怪しまれるのは当然で――


「ま、俺はお前らのこと信用するけどな」


わたしは弾かれたように顔を上げた。

先生がにやっと笑い、片手を腰のあたりに当て、得意げにホタルを見た。


「お前、水原香澄の息子だろ」

「どうして……」


無反応のホタルに代わり、わたしが尋ねると。


「わかるよ、そっくりだからな。水原は俺の同級生だったんだ」


日焼けした顔に笑いじわを作って、そう言った。
< 154 / 359 >

この作品をシェア

pagetop