それでも僕が憶えているから

どうしようかと思案していると、ぶっきらぼうな声が聞こえた。


「じゃあ、お前がまた作れ。今日じゃなくてもいいから」

「えっ」


ポケットに手を入れて歩き始めるホタル。
わたしはその背中を目で追いながら、今の言葉を反芻する。


『今日じゃなくてもいいから』


まるで、このままずっと一緒にいるみたいなセリフ。

今日の続きに明日があって。
そのむこうには明後日があって。

そうやって時間をつないでいけば、ずっと変わらない未来があるような――。

……ん?
いやいや、わたし、何をバカな想像してんの?

この先も変わらずにホタルが存在し続けるわけないじゃない。

なのにそんなこと考えるなんて、まるでわたしがそれを望んでるみたいじゃないか。


ぶんぶんと頭を振って考えを追い払っていると、「真緒っ」と聞き覚えのある声がした。
< 171 / 359 >

この作品をシェア

pagetop