それでも僕が憶えているから
「あ……うん」
「やっぱりね~」
なぜか嬉しそうな千歳と、つられて嬉しそうな大和。
ふたりとも何か勘違いしているらしいけど、変に説明するのも言い訳っぽいからスルーしておこう。
大和がタタッと駆け出して、ホタルのところへ寄っていった。
「よう、花江! 久しぶりだな」
親しげなあいさつに、ホタルがたじろいで後ずさる。
その反応に大和は気を害することもなく、ケラケラ笑った。
「何だよー、お前。夏休みになったらクラスメイトの顔も忘れたのか?」
「いや、そんなんじゃ……」
「まあいいや。一緒にあれやろうぜ」
強引に腕を引っ張って、射的の屋台へと向かう大和。
こんな風にホタルが同年代の男の子と絡むのは、もちろん初めてだ。
親探しという目的ために、人前で蒼ちゃんのふりをすることは時々あるけれど、今はまったく状況が違う。
わたしは内心ヒヤヒヤしつつも、止めずに見守ることにした。
なぜなら、ホタルが顔が、本気で嫌がっているときの顔じゃなかったから。