それでも僕が憶えているから

むしろ少し興味を持っているような、警戒しつつも何があるのか気になっているような、初めて見る表情。

きっと夏祭りの高揚感が彼をそうさせているのだろう。

めずらしいそんな姿を見て、わたしまで嬉しくなってしまったのだ。


「おっちゃーん。同級生に会ったからやらせてくれ」

「またか? まあ別にいいけど、当たっても景品はやらねえぞ」

「サンキュー」


射的の屋台のおじさんは大和の知り合いらしく、細長い銃を「ほらよ」とホタルの方に投げて渡した。

屋台の中には3段の棚があり、様々な景品が並んでいる。

大和からレクチャーを受けながら、おそるおそる銃を構えるホタル。

その横で千歳が応援し、わたしは3人のやり取りをそばでながめた。

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