それでも僕が憶えているから
「ホタル!」
よかった、気がついたんだ!
「ホタルっ……ホタル、大丈夫? 気分悪くない?」
心配しながらも意識が戻ったことに安堵し、興奮気味に何度も名前を呼ぶ。
彼はそんなわたしを見つめると、おもむろに上体を起こした。
「あっ、待って、急に起き上がったら――」
「やっぱり」
「え?」
唐突に口を開いた彼に、わたしは言葉を止めた。
真正面で目が合う。その瞳がさっきまでと明らかに違っていたから、あ、と直感的に思った。
彼は汗でおでこに貼りついた前髪を、右手で、そっと払いながら言った。
「やっぱり、真緒は知ってたんだな」
――そこにいたのはホタルではなく、蒼ちゃんだった。
~Chapter.3