それでも僕が憶えているから
――蒼い追憶――


花火が終わったあとの祭り会場は、一気に人が少なくなる。

ちらほらと片付け始めた屋台を遠目にながめながら、わたしと蒼ちゃんはベンチに座り、生ぬるい潮風に吹かれていた。


『やっぱり、真緒は知ってたんだな』


ホタルが倒れ、代わりに蒼ちゃんが目を覚ましたとき、彼の口から出たのはその言葉だった。

わたしがホタルを知っていた、そのことを指しているのだ。

だけどそれはつまり、蒼ちゃん自身もホタルの存在に気づいていたことを意味している。

どういうこと? ホタルが蘇ったことを蒼ちゃんは知らないんじゃなかったの……?


「蒼ちゃん……」


気詰まりな沈黙を破り、先にわたしが口を開いた。けれど何を言えばいいのかわからず、再び黙りこんでしまう。

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