それでも僕が憶えているから
両親や先生のおかげでフブキの統合も無事に終わり、残すはホタルだけになった。
治療の開始からすでに3年が経っていた。
その頃にはもう、ホタルは眠ったような状態だった。
俺の許可なく出てくることもなくなったし、ほぼ完全に俺のコントロール下にあった。
『先生。俺、最近は泣いたり怒ったりもするようになったし、感情が豊かになったんです。これって、交代人格たちの感情が俺に戻ったってことですよね』
『そうだね、とてもいい傾向だ。これからホタルを統合すれば、彼の感情も蒼くんのものになるよ』
『……はい』
統合は目の前だった。おそらく次のカウンセリングで実現するだろう、と先生が言ってくれた。
それはとても喜ぶべきことで。
……なのに、そのとき俺の中に、思いがけない抵抗が生まれたんだ。
“ホタルを統合したくない”
“彼が味わった絶望を知るのが怖い”