それでも僕が憶えているから

わたしは会話が聞こえるふすまから顔をそむけると、震える足を無理やり動かしてその場を離れた。


考えるな、思考を追うな、いつものように流してしまえ。

さっさとシャワーを浴びて、さっさと寝てしまえばいいんだ……。

そう言い聞かせて廊下を進むわたしの足は、だけど浴室の方ではなく、玄関へと無意識に向かっていく。


素足にサンダルを引っかけて外に出ると、やっと酸素が吸えた気がした。




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