それでも僕が憶えているから

「どういうこと」

「あいつが俺の父親を探す理由は、何だと思う?」


問われた意味が一瞬わからなかった。理由って、そんなの……。


「ホタルにとっても、お父さんはお父さんだから、ただ会いたいんじゃないの?」


蒼ちゃんが重い息を吐く。その反応で、わたしの回答が的外れだったことがわかった。


「俺、こないだ話したよな。眠っていたホタルがよみがえった理由」


たしかに夏祭りの夜、蒼ちゃんは話してくれた。

ホタルが再び現れたのは、お母さんの手紙を見つけたことがキッカケだったと。

その手紙にはお父さんの裏切りが記されていて。

すべての不幸の始まりがそこにあったことを知った蒼ちゃんの、湧き上がる憎しみをホタルが代わりに背負って――


「あ……」


ようやくたどり着いた答えに、背筋が凍った。


「まさか……」


口元を押さえた両手の下から声が漏れる。

まさか、ホタルがお父さんを探している理由は。

探し出して、会って、成し遂げたいことは。
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