それでも僕が憶えているから
『殺してやる――』
底冷えするようなあの声を思い出し、わたしは身震いをした。
違う、そんなわけない、絶対に違う。
頭のどこかではわかっていたことを必死に否定するけれど、真実は圧倒的な重さで現実逃避を砕いていく。
蒼ちゃんがわたしの両肩をつかみ、真正面からまっすぐ見据えて言い切った。
「ホタルの目的は復讐だ」
「………っ」
「俺もまさかと思ってた。でも、今日の様子を見て確信したんだ」
……嘘だよね? お願いだから否定して。
ホタルがこの世界に存在する理由が、そんな悲しいものであるはずがない。
「これ以上、真緒を危険な目に巻きこみたくないんだ。だからもうホタルに関わらないでほしい。もとはと言えば、これは俺自身の問題なんだから」
蒼ちゃんの声がやけに遠く聞こえる。耳鳴りがひどすぎて、ちゃんと頭に入ってこない。
「真緒」
強く手を握られ、わたしは顔を上げた。
「俺、やっとわかったんだ。父親に会いに行かなきゃいけないのは俺自身なんだって」
「蒼ちゃん……」
「今度こそちゃんと自分で向き合う。そうしなきゃ永遠に乗り越えられないから。でも、その前に――」
束の間の沈黙をはさみ、蒼ちゃんの瞳に決意が宿った。
「俺は、ホタルを統合する」