それでも僕が憶えているから
いったい何をしているんだろう。
こんな夜中に、こんな所まで来て、何の意味があるんだろう。
突発的に飛び出しては来たものの、興奮が醒めればそこに残っていたのは、自分への罵倒と虚しさだけだった。
わたしは髪から水滴を垂らしながら、なにげなく公園の奥へと歩いた。
敷地内に遊具らしき物はなく、ろくに手入れされていないのが見てわかる。
一番奥のフェンスは、伸び放題の草木ですっかり覆い隠されていた。
どこからか潮の匂いが漂ってきて、わたしは木の枝をかき分けながらフェンスの向こうを覗いた。
「あ、海」
こぢんまりとした、おそらく今は使われていない古びた港がそこにあった。
入り込んだ地形のせいだろうか。海面は黒いゼリーのようにのっぺりと固まり、波音ひとつ響いていない。
白い桟橋が暗闇に横たわるように、ぼんやりと浮かんで見える。
……まるで、世間から忘れ去られたみたい。
ひっそりと、誰の目にも留まらずに、ただそこにあるだけの海。