それでも僕が憶えているから

だから……やっぱり信じたくない。


『ホタルの目的は復讐だ』


本当の彼はそんなことを望んでいるわけじゃないと……信じたい。


『俺は、ホタルを統合する』

『人を傷つける左手は、もういらない』


蒼ちゃんが幸せになるためには、ホタルを消さなくちゃいけなくて。

でも本当に、それしか道はないの? 蒼ちゃんとホタル、ふたりが共存していける未来はないの? 

このままじゃどちらかが犠牲になってしまう。

そんなのは嫌だ。ねえ、ホタル――。


カシャン、と背後で金網のフェンスが揺れる音がした。わたしは驚いて振り返り、そして息をのんだ。


「ホタル……」


黄昏に淡くかすむ景色の中。ほんの5メートルほど先に、彼がいた。

信じられない……こんなタイミングで会うなんて。桟橋の上で立ち上がったわたしに、ホタルが気づいて顔をこわばらせる。


「待って!」


踵を返して再びフェンスの向こうに戻ろうとした彼に、思わず叫んだ。
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