それでも僕が憶えているから
「……っ」
金網が激しく揺れる悲鳴のような音。それは小さな余韻を残し、やがて静寂に吸いこまれていった。
だけどまだ空気がびりびり震えているような気がしたのは、きっとホタルから伝わってくる激情のせいだ。
わたしの視界からすべての景色が消えるほど、彼の体がすぐ目の前を塞いでいた。
「……もう……」
喉の奥から絞り出した声が震えている。
「もう、やめてくれ……どうせ僕は消えるのに」
涙は出ていない、でも泣いているような顔だった。
どうせ消える――それはホタルの悲痛な心の叫び。わたしは胸が締めつけられて、うまく息ができなくなる。
「お前となんか、出逢わなきゃよかった……っ。
僕の目的は最初からひとつだったんだ。すべての不幸の原因を作った蒼の父親に復讐する。そうして全部終わらせて、何もかも、僕自身も、消してやるって決めてたのに」
「ホタル」
やめて。これ以上聞きたくない。あなたの口からそんなこと。
「お願い、復讐なんて――」