それでも僕が憶えているから
開け放した窓から、夜風がさらさらと流れこんできた。日中はまだ暑いものの、夜になると少しだけ涼しく感じる日も多い。
「で、どうしたの?」
要件をすぐ言わないお母さんにこちらから尋ねた。お母さんが口角を上げ、ぎこちない笑みを浮かべる。
「おじいちゃんから大事なお話があるの。一階におりてくれる?」
「……うん」
おじいちゃんから話? 急に何だろう。
あまり気乗りしないけど、呼ばれたら行かないわけにはいかない。
わたしはボサボサの髪を結び直して部屋を出た。
一階のおじいちゃんの部屋に入ると、いつになく機嫌のよさそうな声で「座りなさい」と促された。
わたしはおずおずと畳に腰を下ろし、その隣にお母さんが座った。
「勉強はどうだ? 真緒」
「えっと……夏休みの宿題は終わらせたので、2学期の予習に取りかかってます」