それでも僕が憶えているから
その返事におじいちゃんが満足そうに髭を撫でる。思い通りに事が進んでいるときの癖だ。
わざわざこんなことを聞くために呼ばれたんだろうか。奇妙な空気に居心地の悪さを感じていると、唐突におじいちゃんが話を変えた。
「こんどの土曜日は予定を空けておきなさい」
「え?」
「顔合わせの食事会を予定してある。乾の両親も来るから粗相のないようにな」
……顔、合わせ?
乾さんの、両親?
きっとわたしは今、とんでもなく間の抜けた表情をしていたと思う。だって、何が何だか理解できなかったのだ。
説明を求めるように隣を見ると、お母さんは青ざめた顔で小さくなってうつむいていた。
「え、何? どうしたの? お母さん」
嫌な予感が襲ってきて、だけどまだ認めたくなくて。恐る恐る尋ねると、お母さんが観念したように口を開いた。
「再婚することになったの。乾さんと」