それでも僕が憶えているから
膝から手が滑り落ちる。それは畳の上に力なく落ちて、指先がみるみる冷えていくのを感じた。
わたしのせい、なんだ。わたしという荷物があるから、お母さんは再婚を受け入れた。そういうこと……。
「土曜は昼前に出発するから、その予定で段取りをしておきなさい」
おじいちゃんの言葉に、わたしは機械のようにうなずく。そして、自分の内側にふつふつと湧いてくる黒いものを抑えつけるように飲みこんだ。
……消えろ。よけいな感情は消えてしまえ。
わたしさえ感情を殺しておけば、まわりに迷惑がかからない。
今までもずっと、そうやって生きてきたのだから――。
* * *
【真緒~。元気? もうすぐ夏休み終わりだね。2学期が始まる前にお泊り会とかしない?】
【ごめん、ちょっと今いろいろ忙しくて。せっかく誘ってくれたのにごめんね】
【そっかあ。じゃあまた落ち着いたら遊ぼうね!】
【うん、ありがとう】