それでも僕が憶えているから
だけど仕方のないことなんだ。
逆らえばおじいちゃんの逆鱗にふれるのは目に見えている。
そしたらあの家にいられなくなる。お母さんにも迷惑がかかる。
まわりを不幸にするだけの感情なら、そんなものは持ってはいけない感情なんだ。
「……消えろ」
わたしは拳を作り、胸に強く押し当てた。
いらない感情なんて消えればいい。
いっそわたしごと消えてしまえばいい。
行き場のない想いをぶつけるように、足元の砂利を蹴り上げた。
そのとき、視界のはしで何かが光った気がした。
「え?」
顔を上げて辺りを見回す。が、それらしきものは見つからず、さっきと変わらない夜の海が広がっているだけだ。