それでも僕が憶えているから
「凪さんは、いつまでここにいられるんですか?」
「真緒ちゃんたちの夏休みと一緒で、今月いっぱいだよ。9月からは東京に戻って仕事の山」
「そっか……」
身勝手な願望だけど、できれば凪さんにはずっと蒼ちゃんのそばにいてほしかった。
だって、わたしはまだ蒼ちゃんを支えてあげる自信がない。たぶん顔を合わせたら、あの瞳の奥にホタルを探してしまうから。
『お前となんか、出逢わなきゃよかった……っ』
ふいに思い出したホタルの声に、胸がずきんと痛んだ。
あれから2週間以上経ったのに、わたしの心はあの場所からちっとも動けずにいる。
「夏休みって、ほんとにあっという間だよね」
「そうですね……」
いつまでもこんなんじゃダメだ。わたしは意を決し、凪さんを見上げて言った。
「あの、凪さんっ。ちょっとお願いしたいことがあるんです」
「ん?」