それでも僕が憶えているから

【真緒。しばらく会っていないけど元気ですか?
こないだは、困らせるようなことを言ってごめん。
でも俺が真緒のおかげで前を向こうと決意できたのは本当だから、どうしても伝えたかったんだ。

今日、俺はホタルを統合する。

そしてすべてが済んだら、真緒にきちんと報告するから。
そのときは俺の本当の気持ちを伝えさせてください】



ブレーキの音と同時に膝の上からバッグが落ちた。持ち手の金具が足元に当たった痛みで、はっと我に返る。


「真緒、どうかした?」


横に座ったお母さんが心配そうに顔をのぞきこんできた。


「ううん。大丈夫……」


わたしは引きつった笑顔で答え、体をかがめて散らばったバッグの中身を拾い始めた。

財布、ハンカチ、リップクリーム、とバッグの中に入れながらも、さっき見た文字がずっと目の前をちらついている。

“今日、俺はホタルを統合する”

とうとう来たんだ。本当に、このときが……。

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