それでも僕が憶えているから

いつのまにかタクシーは路肩に停車していた。わたしの背中をさすりながら、お母さんが前を向いて言った。


「お父さん、真緒を病院に連れて行ってもいいですか!?」

「バカなことを言うな。今から顔合わせだぞ。俺に恥をかかすのか」

「でも真緒が……」

「つべこべ言うな! どうせこの再婚が気に入らないから当てつけで仮病をしているだけだ!」


……ひどいな、我が身内ながら。朦朧とした頭で、なぜか冷静にそんなことを思った。

ていうかわたし、こんなひどい扱いをされるほど何か悪いことしたっけ。

ああそうか、わたしの存在自体が“いらない荷物”だからか。


「仮病って……こんなに真緒が真っ青な顔してるのに」

「だったらこいつだけ帰らせろ! お前が穴をあけるわけにいかないだろ!」

「お父さん」

「お前らは自分の立場がわかってるのか!? 誰のおかげで今まで飯が食えてきたんだ」

「それは……っ」

「こんなときまで俺に迷惑をかけるのか!」

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