それでも僕が憶えているから
「もういい……もうわたし、家出て行く。迷惑なんでしょ? わたしなんか最初から生まれなければ、みんな幸せだったんでしょ!?」
一度叫んだら、さっきまであんなに苦しかった呼吸が楽になった。
だけどこんどは言葉が止まらない。胸の奥にぎゅうぎゅうに押しこんでいた感情が、蓋を突き破ってあふれ出してくる。
「もうさ、おじいちゃんの思い通りにならないわたしなんて、いるだけで迷惑なんだよね? だったら捨ててよ、その方がよっぽど楽だよ」
何て言うんだっけ、今のおじいちゃんの顔。
ああ、わかった、“鳩が豆鉄砲を食ったような顔”だ。
「お母さんだって、わたしがいるせいで辛いことばっかじゃん。おまけにこんな再婚まで無理やりさせられてさあ、何なのこれ、意味わかんない」
「真緒、お母さんは別に――」
「無理しなくていいよ、もう! お母さん、いっつもしんどそうだったじゃん。わたしがおじいちゃんの機嫌を損ねないかハラハラしながら見てたでしょ?
伝わるんだよ、そういうの。お母さんが優先してるのは、結局おじいちゃんの顔色なんだって!」
こんなこと言いたくなかったのに。お母さんがちゃんとわたしを大事に想ってくれていること、わかっているはずなのに。
どうして。止まらない。