それでも僕が憶えているから
『何だこれ』
『見ての通りハンバーグだよ』
『……はんばーぐ?』
目の前のテーブルに出された見慣れない食べ物。
香ばしい匂いも、温かい湯気も、それまでの僕の世界にはなかったもの。
しぶしぶ口に運んでみれば、それは案外悪くない味で。箸を進める僕にあいつは「米も食べろ」だの「野菜も食べろ」だの口うるさく言ってきた。
面倒くさい女に関わった、と僕は心底うんざりしていた。
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