それでも僕が憶えているから
「こうしてちゃんと会うのは初めてだよな。よろしく」
「……ここはお前の部屋か」
「まあ一応」
「なんで僕がここにいる」
出された手を無視して問うと、凪が肩をすくめた。
「さっきまでは蒼がいたんだよ」
「そんなことはわかってる。だからなんで、わざわざ蒼から僕に代わったのか聞いてるんだ」
人格の交代は、最近では蒼がコントロールしている。ということは、蒼があえてこの部屋で僕に代わったということだ。
そんなことをする理由がわからずイラだっていると、凪が僕の肩の後ろに目配せした。
「開けてみろよ」
言われて後ろを振り返る。ワンルームの隣のせまいキッチンに、備え付けらしい小さな冷蔵庫があった。
ますます意味がわからない。僕は憮然とした態度で冷蔵庫の扉を開け、そして息をのんだ。
「これ……」
「何かわかるか?」
「………」