それでも僕が憶えているから
ぽつぽつと紡がれる蒼の言葉とともに、何かが僕の中へと流れこんでくる。
何だ、これは?
妙に温かいような、じんじんするような、ぎゅっと胸がうずくような。
……ああ、わかった。これは蒼の感情だ。
僕に向けられた、蒼の想い。
「蒼くんにとってホタルは、もはやただの交代人格じゃないんですね」
ふっと息を吐いて医師が言うと、蒼が噛みしめるように答えた。
「はい、うまく言えないけれど。
ホタルはやっぱり特別で、大切な存在なんです」
本当に、どいつもこいつも……。
バカばっかりだ。
僕が生まれてきた、この世界は。
(――ホタル。聞こえてる?)
頭の中で蒼が呼びかけてきた。こうして話をするのは、ずいぶん久しぶりな気がする。
(聞こえてるよ、さっきから。せっかく眠ろうとしてたのに、お前のおしゃべりがうるさすぎてな)
(ははっ、ごめん)
(………)
(ごめんな、本当に……ずっと、ずっと)
(………)