それでも僕が憶えているから


僕は病院を出て走り出す。

小雨の降り注ぐ中、地面を蹴る足は不思議なくらいに軽い。

心と体が、今までにないほどぴたりと一致した感覚。

生まれて初めての、生きているという実感。



澄みきった頭の中で、蒼の声が聞こえた。


(行こう。ホタル)



ああ、そうだな。一緒に行こう。


真緒のところへ。







         ~蛍火の海 


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