それでも僕が憶えているから
死のうとしたわけじゃないんだ。
だけどここからいなくなりたかった。
誰からも本当は必要とされていない自分を、消してしまいたかった。
そして願わくば、わたしがいなくなったことで周りに悲しんでもらいたい。
みんなを後悔させたい。
必要な存在だったと思い知らせてやりたい。
――そんな愚かで醜い感情を抱く自分が嫌で、もう全部投げ出してしまいたかった。
「……ごめん」
しばらく泣いて落ち着いてきたわたしは、涙をぬぐいながら謝った。
花江くんは固い表情のまま、わたしから手を離した。
いったい何の偶然で彼がこの場に居合わせたのかはわからない。