それでも僕が憶えているから
写真は隠し撮りしたものらしく、スーツ姿でタクシーに乗り込む彼の横には、例の偽物の女性も写っている。
「そしてこの女の正体は、福田のぶえ。萩尾氏の秘書だ」
「全部、つながった……」
わたしは胸に手を押し当て、震える声でつぶやいた。心臓がドキドキして、手のひらに汗をかいている。
そんなわたしとは裏腹に、ホタルは頬杖をついた手のひらで口元を隠して無表情のままだ。
「ホタル、あんたすごいよ。よくつきとめたね」
「別に何もすごくない。わざわざ偽物が来て、嘘の情報を僕たちに教えたってことは、本当のことを知られると困るってことだろ。つまり偽物の正体さえつかめば、おのずと核心に近づく」
たしかにそうだけど。
でも、やっぱりすごい。
何よりもわたしが感動しているのは、ホタルが復讐をやめた今もこうして父親探しに協力しているということ。
純粋に、蒼ちゃんのために……。