それでも僕が憶えているから
でも少しだけ冷静になった頭で状況をふり返ってみると、申し訳なさとバツの悪さがこみ上げてきた。
「本当にごめん。花江くんには関係ないのに、巻きこんじゃって……」
もう一度謝ると彼はやはり何も言わず、おもむろに立ち上がって、近くに落ちていた丸い石を拾った。
何をしているんだろう、と不思議に思うわたしの前で、彼は桟橋から海に石を投げ入れる。
―――瞬間。
真っ暗だった夜の海が、光を放った。
まるでサファイアを散りばめたような、無数の青い輝き。
淡く繊細な光が波に揺られる様子は、青白い炎が揺れているようにも見える。
「何これ」
思いがけない幻想的な光景に呆然として尋ねると、海を見つめたまま花江くんが小さな声で答えた。
「……夜光虫」