それでも僕が憶えているから

「あれ? 凪さん、出かけるんですか?」


ハンバーグをお皿にうつしていると、凪さんがパソコンをバッグにしまいながら玄関に移動していった。


「うん、他にも調べたいことがあるんだ。今夜はもう戻らないけど、真緒ちゃんたちはここに泊ってくれていいから」


ドキンと心臓が跳ねる。泊まるって、ホタルとふたりで? そりゃあ今さらわたしは家に帰れないけど……。


「ところでホタル」


ドアノブに手をかけて凪さんがふり返った。


「蒼の父親……萩尾氏の行動を調べたら、日曜の午後3時頃に行きつけの喫茶店をひとりで訪れるのが習慣らしい。ちょうど明日は日曜だ。行くか?」


横で聞いていたわたしは唾をごくりと飲みこんだ。

日曜の午後。おそらく平日は過密スケジュールの萩尾さんが、唯一ひとりになる時間。狙うならそこしかない。


「あの、わたしも一緒に行きます、行かせてください」


ホタルの返事より早く懇願すると、凪さんが予測していたように微笑んだ。

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