それでも僕が憶えているから
「了解。明日の朝イチでレンタカーを借りておくから一緒に行こう。ふたりとも、今夜はゆっくり休んで明日に備えるように。
あ、そうだ。俺のハンバーグもちゃんと残しておいてね」
おちゃめに言い残した凪さんが、小走りで玄関を出て出て行った。
わたしは閉まったドアからハンバーグに視線を戻し、息を吐いた。なんだか急展開すぎて、頭がふわふわしている感じだ。
「……とうとう明日、お父さんに会えるかもしれないんだね」
「会うのは僕じゃなくて蒼だけどな」
感慨深くつぶやいたわたしに、ホタルがそっけなく言った。
「まあ、たしかにそうなんだけど……」
「何だ?」
ホタルが訝し気にこちらを見る。
わたしは彼の前にぺたりと座り、その黒い瞳を見つめた。
「……ホタルも明日、一緒に行ってくれるんだよね?」
変な質問だな、と自分でも思った。一緒にも何も、ホタルは蒼ちゃんと常に一緒にいるのに。
なぜこんなことを聞いているのだろう。