それでも僕が憶えているから
聞いたことがある。たしか刺激に反応して発光するプランクトンだ。
名前だけは知っていたけど、こんなところに生息していたのか。
しばらくすると発光がおさまり、もう一度花江くんが石を投げ入れた。
海面に再び灯りがともる。
波間にたゆたう青い炎。
わたしはその光景を、言葉もなくぼんやりと見つめていた。
不思議だ。
さっきまであんなに荒れていたはずの心が、いつのまにか落ち着いている。
それはきっと彼のおかげで……。
わたしは視線をそっと上げて、花江くんの方を見た。
整った白い横顔に、波の影がゆらゆらと揺れている。
……きれい。
ふいに浮かんだ言葉は、夜光虫と花江くん、どちらに対するものだったのか。
その答えは、自分でもよくわからなかった。