それでも僕が憶えているから
「ねえ真緒さん。おじいさんの会社が飛躍するせっかくのチャンス、あなたも協力してあげたいでしょ?」
「けっこうです」
きっぱりとはねのけると、福田のぶえの眉が引きつった。
「福田さんのしていることは脅迫です。
あなたの勝手な行動を萩尾さんは知ってるんですか?
ビジネスのことだけじゃない。蒼ちゃんのこともです。
もしかして萩尾さんは、自分の息子が会いたがっていることすら知らないんじゃないですか?
親子の再会を邪魔しているのは、福田さん、あなたがひとりで企んだことじゃないんですか?」
「黙りなさいっ!!」
ヒステリックな叫びと同時に、福田のぶえの拳がハンドルを叩いた。
ビーッ! ビーッ! と耳障りなクラクションが鳴り響き、いきなり車がでたらめに蛇行し始める。
他の車といつ衝突するかわからない、めちゃくちゃな運転だ。
遠心力で体が激しく揺さぶられ、頭からドアに叩きつけられそうになったそのとき――
力強い腕が、わたしを包んで衝撃から守った。
「ホタルっ……」