それでも僕が憶えているから
まるで体が海藻になったみたいだ。
手も足もゆらゆら揺れて、自分の意志とは関係のない方向に漂っている。
息ができない。ここはどこ?
ああ、思い出した。海だ。
わたし、落ちたんだった。
弱々しい光が海面のむこうに微かに見える。
けれどそれは、どんどん遠ざかっていく。
だってわたしの体が沈んでいるから。
……嫌だ。死にたくない。
わたしはまだお母さんと話さなくちゃいけないことがある。
千歳や大和とも、もっとバカ話したり、悩み相談なんかもしてみたい。
凪さんにも、助けてもらってばかりで何もお礼ができてない。
蒼ちゃんが水泳してるところも、一度でいいから見てみたかった。
それから。それから――
「――真緒っ!!」
くぐもった声が意識の外で聞こえた次の瞬間、体がぐんっと上昇した。
水の膜を突き破るように、顔が海面より上に飛び出した。
とたんに流れ込んできた酸素に、肺がビックリして激しく咳きこむ。