それでも僕が憶えているから

「蒼ちゃん……ビックリしたあ」


わたしがわざと大げさに驚くと、蒼ちゃんは「ごめんごめん」とイタズラっぽく笑った。

その笑い方はとても蒼ちゃんらしくもあり、そして少し意地悪なところが、彼を思い出させる。

日焼けした蒼ちゃんの右手首には、以前わたしがプレゼントしたブルートパーズのブレスレット。

石の持つ意味は“希望”――そして、“友情”だ。


「蒼ちゃん、合宿は? 明日までじゃなかったっけ」

「無理言って一日早く帰らせてもらった。今日はあれから一年だから」


そっか……蒼ちゃんも同じことを考えていたんだ。

どう反応すればいいのかわからず、小さく微笑むだけのわたしに、蒼ちゃんが一枚の写真を差し出した。


「これ……」

「凪兄ちゃんから預かってたんだ。節目が来たら真緒に渡してほしいって」


それは昨年の夏祭りの写真だった。
手にした瞬間、胸が詰まった。


……提灯の赤い光の下、千歳と大和が大きな口を開けて笑っている。

その横ではわたしが嬉しそうに、隣の彼を見つめている。

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