それでも僕が憶えているから
窓から身を乗り出してきた蒼ちゃんが、視線を落とす。
「何か作ってんの?」
彼の目が指しているのは、わたしの机の上の物だ。
ゴム紐や、色とりどりのビーズ、そして小さな天然石。
「うん。夏用のブレスレット」
「真緒って器用なんだよ。わたしも色々作ってもらったんだ。ほら」
千歳が立ち上がり、「見て見て」と写真を表示したスマホを蒼ちゃんにかざす。
いつもテンションが高めの彼女だけど、なんだか今日はいつも以上にはしゃいでいるみたい。
蒼ちゃんがスマホの画面を見ながら、ため息まじりに言った。
「すごい。これほんとに真緒が?」
「別にすごくないよ。好きなようにパーツを並べるだけだもん」
「いや、すごいって。世界にひとつの手作りだろ? いいなあ、特別感があって」
……そんなに褒めてくれるなら、喜んで蒼ちゃんのも作りますけど?
なんて言葉が浮かんだものの、口には出さなかった。
友達になったばかりの女子から手作りアクセなんてもらったら、さすがの蒼ちゃんも引いちゃうだろうから。