それでも僕が憶えているから
幸いにも、というべきか。救急車で運びこまれた病院は、普段からおばさんのかかりつけだったらしく、適切な処置のおかげで発作はすぐに落ち着いた。
しばらくするとスーツ姿の男性が病室に駆けこんできた。
ついさっき写真で見たのと同じ顔に、あっ、と思う。
蒼ちゃんちのおじさんだ。
おじさんは看護師さんから、わたしが救急車を呼んだことを伝えられると、深々とこちらに頭を下げた。
「本当にありがとうございました。迷惑をかけてしまって、何て言っていいか」
「迷惑だなんて、とんでもないです」
もしかしたら倒れた原因は、わたしの発言のせいかもしれないのだから。
その言葉が喉まで出かかって、飲みこんだ。